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環境感受性の理解で混乱するポイント

更新日:11月4日

※HSPを研究テーマにする学生、研究者、専門家などに向けた記事となります。


環境感受性とは?


環境感受性(Environmental Sensitivity)という言葉やその考え方は、HSPを理解するためには不可欠なものです。


本サイトで説明されるように、環境感受性とは「ポジティブ・ネガティブ両方の環境や経験を処理したり、知覚したりする傾向の個人差を表す特性」として定義されます(Pluess, 2015)。ざっくりといえば、環境からの影響の受けやすさを表す概念です。




この用語で混乱するポイント


この言葉を理解しづらくしている一つの要因には、この領域の研究者が、環境感受性と同じ意味を表す言葉(例えば、「感覚処理感受性」など)を「あえて」複数使い分けている点にあると思います。


そこで今一度、環境感受性という言葉を簡単に整理してみましょう。


まず、環境感受性というのは、もっとも上位の概念だということです。以下の図を見ていただくとわかりやすいと思います。


※画像はクリックすると拡大します

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環境感受性は「正負の環境に対する影響の受けやすさ」であると説明しましたが、それは様々な形(マーカー)で観察することができます。例えば、遺伝子型や神経生理的な反応性、気質・性格(行動)などです。


研究者は、その指標(マーカー)ごとに、「表現型感受性」「生物的感受性」「感覚処理感受性」など、複数の用語を使い分けることがあります。そして、これらは環境感受性の下位概念であるともいえます。


どのように使い分けられているかを簡単にみていきましょう。


図の一番左、「表現型感受性」は、主に単一の感受性遺伝子型を取り上げる際に用いられます(e.g., Markovitch & Knafo-Noam, 2021)。


左から二番目、「多遺伝子感受性」は、ゲノムワイド研究によって複数の感受性遺伝子型にもとづく得点を用いるようなときに使用されます(e.g., Keers et al., 2016)。


図の中央、「生物的感受性」は、研究協力者に刺激を提示した時の脳神経活動やストレスホルモン等の反応性を指標にする場合に用いられる言葉です(e.g., Shakiba et al., 2020)。


右から二番目、「気質的感受性」は、主に感受性の高さを表すと思われる乳幼児の困難気質やネガティブ情動性を指標とする際に使用されます(Evans & Rothbart, 2008)。※引用文献のように成人を対象にする場合でも用いられることもあります。


一番右、「感覚処理感受性」は、これも気質的感受性の一種といえますが、特にAron & Aron(1997)が提案した概念を指します。


まとめ


環境感受性は、正負の環境に対する影響を受けやすさを表す上位の概念です。研究では、それを測定するために、感受性遺伝子型や神経生理的な反応性、気質・性格などを指標(マーカー)にすることがあります。その指標に応じて、「表現型感受性」「生物的感受性」「感覚処理感受性」など、より特定の(スペシフィックな)言葉が用いられる場合があります。



引用文献


Aron, E. N., & Aron, A. (1997). Sensory-processing sensitivity and its relation to introversion and emotionality. Journal of Personality and Social Psychology, 73(2), 345–368. https://doi.org/10.1037/0022-3514.73.2.345


Evans, D. E., & Rothbart, M. K. (2008). Temperamental sensitivity: Two constructs or one? Personality and Individual Differences, 44(1), 108–118. https://doi.org/10.1016/j.paid.2007.07.016


Greven, C. U., Lionetti, F., Booth, C., Aron, E. N., Fox, E., Schendan, H. E., Pluess, M., Bruining, H., Acevedo, B., Bijttebier, P., & Homberg, J. (2019). Sensory Processing Sensitivity in the context of Environmental Sensitivity: A critical review and development of research agenda. Neuroscience and Biobehavioral Reviews, 98(August 2018), 287–305. https://doi.org/10.1016/j.neubiorev.2019.01.009


Keers, R., Coleman, J. R. I., Lester, K. J., Roberts, S., Breen, G., Thastum, M., Bögels, S., Schneider, S., Heiervang, E., Meiser-Stedman, R., Nauta, M., Creswell, C., Thirlwall, K., Rapee, R. M., Hudson, J. L., Lewis, C., Plomin, R., & Eley, T. C. (2016). A Genome-Wide Test of the Differential Susceptibility Hypothesis Reveals a Genetic Predictor of Differential Response to Psychological Treatments for Child Anxiety Disorders. Psychotherapy and Psychosomatics, 85(3), 146–158. https://doi.org/10.1159/000444023


Markovitch, N., & Knafo-Noam, A. (2021). Sensitivity, but to which environment? Individual differences in sensitivity to parents and peers show domain-specific patterns and a negative genetic correlation. Developmental Science, e13136. https://doi.org/10.1111/desc.13136


Pluess, M. (2015). Individual Differences in Environmental Sensitivity. Child Development Perspectives, 9(3), 138–143. https://doi.org/10.1111/cdep.12120


Shakiba, N., Ellis, B. J., Bush, N. R., & Boyce, W. T. (2020). Biological sensitivity to context: A test of the hypothesized U-shaped relation between early adversity and stress responsivity. Development and Psychopathology, 32(2), 641–660. https://doi.org/10.1017/S0954579419000518